交戦者資格については多くの学説が一致しており、本来は論点にならないはずなのですが、 ネット上では突拍子もない解釈が披露される場合があります。ある書籍の一部分だけを抜き 出して恣意的に解釈を加えるという方法です。 よく使われる(引用がされる)のは藤田教授の新版『国際人道法』増補です。突拍子もない 解釈とは、まず(1)「正規軍は無条件に交戦者資格・捕虜資格が与えられる」として、(2)「正 規軍の交戦者資格はハーグ四条件とは無関係に交戦者資格がある(制服の着用は義務では ない)」と解釈します。この理論を南京における非武装区潜伏中の中国兵にあてはめて、(3) 「潜伏中の中国兵は正規軍の所属であるから、制服の着用とは無関係に交戦者資格(捕虜資 格)がある」と結論します。なぜこういう主張がされるのか、問題の記述をみてみましょう。
確かに、本文では正規軍には無条件で交戦者資格が与えられると書いてあります。この部 分はハーグ陸戦法規第一条を解釈したものですが、国家が保持する正規軍は無法者の集団 ではないので、当然ながら国際法の枠内で編成されています。藤田教授が注釈で言及した部 分「正規の軍人は一般に制服着用を必要とするが」というのが国際法上の慣行を示した部 分です。藤田教授も以下のように述べています。
藤田教授は正規軍であっても交戦者資格を得るためには「一般に制服の着用」が必要であ るとしています。逆に言うと、制服を着用していない場合には交戦者資格が認められないという 意味にもなるでしょう。正規軍に関する制服着用の慣行について藤田教授の注釈(P90)には 「一般に」とあります。「一般に」という事は「例外的に制服の着用が必要とされない」場合が あるという事にもなるでしょう。その点を簡単に考察します。
正規の兵力(正規軍)は、ハーグ4条件を当然備えているものと考えられるので、ハーグ要 件を欠く時は交戦者の特権(捕虜資格)を失うという説明がされています。
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